放射線が身体に与える影響
● 細胞への影響と修復機能
人体は修復機能を備えています
放射線を人体に受けると遺伝子(DNA)が傷つき、障害を発生させるおそれがあります。
これは、放射線が直接DNAを切断したり、放射線により体内の水が電離してできたラジカルでDNAを切断するからです。
しかし、DNAには修復能力があるのため、完全に修復されれば何の問題もありません。
ところが修復にミスがあるとがんや遺伝的影響の原因になります。
そして、DNAを修復できなかった場合、その細胞は死んでしまいます。
細胞が死んでしまった場合でも、その場所が臓器であれば増殖した正常細胞に置き換えられていくため、大きな障害は起こりません。
しかし、細胞が大量に死んだ場合は、臓器そのものが死んだり、臓器によっては人が死亡する場合もあります。
■ 生体の修復機能
● 人体への影響
急性障害と晩発障害、確定的影響と確率的影響
人体の被ばくは、被ばく後の影響から体細胞、生殖細胞、胎児への被ばくに分類されます。
体細胞の被ばくは被ばくした本人にのみ障害が発生するものです。生殖細胞と胎児への被ばくは生まれてくる子どもたちに影響を及ぼすものです。
体細胞への被ばくによる障害は、3ヵ月以内に発症する「急性障害」と、半年から1年以降に発症する晩発障害に分けられます。
さらに、受けた放射線量とその影響によっても障害は分類され、線量が増加するにつれて重症度が増す「確定的影響」と、がんや遺伝的影響のように線量に比例して発生確率が増える「確率的影響」があります。
なお、確定的影響は被ばく線量を下げれば障害を防止でき、確率的影響は線量を下げると障害を発生する確率を下げることができます。
子孫に影響が出る生殖細胞と胎児への被ばく
生殖細胞が被ばくした場合、被ばく者本人ではなく、その子孫で確率的影響(がん、遺伝的影響)が起こります。
そして、胎児が被ばくした場合は、被ばく時の発生段階(週齢)によってその影響が大きく異なります。
例えば、着床前期の被ばくでは出生前死亡、器官形成期においては形態異常や精神遅滞、胎児期ではがんの発生に最も影響を与えます。
また、胎児の被ばくは、胎児の形態、機能異常だけでなく、体細胞、生殖細胞の被ばくも同時に起こると考えられています。
しかも、細胞増殖を盛んに行っている胎児が被ばくした場合、成人と同じ線量を受けたとしたら、2~3倍ほど強い影響が出ることもわかっています。