■ 代表的な核医学検査について


身体の様々な部位で核医学検査が行われています。例えば、骨シンチグラフィのようにシンチグラフィ(または略してシンチ)と名前がついていますが、これは体内に投与された放射性医薬品から出てくる放射線(ガンマ線)を専用のカメラで検出した際にその部位と量に応じたシンチレーション(光)が発生し、それを画像化するため、そのように名付けられています。骨シンチ以外にも、ガリウム、肺血流、肺換気、腎、レノグラム、甲状腺、甲状腺摂取率測定、副甲状腺、肝受容体、肝胆道、唾液腺、メッケル憩室、心筋血流運動負荷・薬剤負荷、心筋脂肪酸代謝、心筋交感神経機能、出血巣、脳血流、脳ドパミントランスポーター、脳槽、骨髄、副腎皮質、副腎髄質、センチネルリンパ節、ソマトスタチン受容体など多くのシンチグラフィ検査があります。
 

■ 骨シンチ


骨シンチは悪性腫瘍の骨転移の診断に有用です。薬剤の注射から約3時間以降に撮影します。乳癌、前立腺癌、肺癌は骨転移の頻度が高いので、この検査がよく行われます。また、骨の代謝亢進に対しても非常に感度が高く、病巣を検出することができます。
装置の種類によっては、SPECT画像(断層像)も得られるようになり、必要に応じて追加で撮影しています。

全身骨シンチ像(骨転移 症例)
骨SPECT(冠状断像)  
骨SPECT(矢状断像)
 

■ 心筋血流シンチ


心臓の筋肉に酸素・栄養を供給する冠動脈が狭窄すると、心筋は虚血状態になり、その血流が停止すると心臓は心筋梗塞に陥ります。これらの病態判定にこの検査は非常に有用です。通常、心臓に負荷(薬物負荷又は運動負荷)をかけてから放射性医薬品を注射し、撮影を行います。その後、約3時間後に負荷をかけず安静状態で2回目の撮影を行って、虚血・梗塞の判定を行います。
 

 心筋血流シンチ(上段:負荷像、下段:安静像)  
上記患者の心臓CT画像(矢印部が血管狭窄)
QGS、QPS像
 

■ 脳血流シンチ


脳血管の障害により引き起こされる脳の虚血状態を早期に検出することができます。また、脳梗塞に陥った部位の広がりの判定にも利用されます。また、アルツハイマー病などの認知症の診断、てんかんの発作時の焦点検索にも有用な検査です。
 

脳梗塞後の患者(左側:脳血流シンチ、右側:MRI)

 

■ 脳線条体(ドパミントランスポーター)シンチ


この検査はドパミン神経の変性や脱落を画像化し、パーキンソン症候群およびレビー小体型認知症の診断に有用です。ドパミントランスポーターは黒質線条体ドパミン神経の終末部に強く発現します。ドパミントランスポーターに高い親和性を持つ化合物にRIで標識した薬剤を注射し、約4時間後に撮影を行います。
 

脳線条シンチ(上段:正常像、下段:パーキンソン病)

 

■ ソマトスタチン受容体シンチ(神経内分泌腫瘍シンチ)


インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、カルチノイドなどの神経内分泌腫瘍の診断に有用です。この腫瘍はソマトスタチン受容体が高頻度に発現している特徴を利用し、ソマトスタチンの類似物質であるペンテトレオチドにRIで標識した薬剤を注射し、約4時間と24時間後に撮影(長時間かけて撮影) を行います。
この薬剤は発注後に海外から取り寄せるため、検査日の8日前以降はキャンセルできません。
もしキャンセルが決まれば、すぐにご連絡ください。

RI投与から24時間後の全身像
 
   
青線レベルの横断像
(左図:CT画像、右図:SPECT画像)
  上段:SPECT画像
下段:SPECTとCTを重合わせ画像
<膵臓の病変に一致するRIの集積上昇がみられる>

■ 肺血流シンチ


この検査は肺動脈に血栓が詰まって引き起こされる肺塞栓症の診断に有用です。肺塞栓症は通常、造影剤を使用したCT検査で診断することが多いですが、造影剤に副作用がある場合や腎機能が悪い方でも、この検査を行うことが可能です。 また、肺癌手術前の肺血流評価や先天的な奇形に伴う動静脈シャントの程度評価に用いられることもあります。
 

右下肺の肺梗塞症例
(左側:肺換気シンチ、右側:肺血流診シンチ)
 

■ 腎動態シンチ(レノグラム)


腎機能の状態を左右の腎臓を別々に評価することができます。放射性医薬品を注射開始と同時に撮影を開始して、約30分間連続してデータ収集をして解析しグラフ化して結果を出します。また、腎移植手術におけるドナーの評価、術後のレシピエントの経過観察にも利用されています。その他、尿路系が拡張した症例では、利尿剤を負荷して検査を行うこともあり、尿路系の拡張が器質的な閉塞によるものか、機能的なものかの鑑別が可能です。
 

左尿管腎盂移行部閉塞に伴う水腎症